【SDGsログ vol.197】持続可能な観光とは何か考えてみよう

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【SDGsログ vol.197】持続可能な観光とは何か考えてみよう 
「世界遺産登録で地獄を見た」1万人が押し寄せた人口400人の町で何が起きたか

https://president.jp/articles/-/50733?page=1

初期の世界遺産登録説明会では、壇上にいる人たちが「みなさんうかうかしている場合じゃないですよ、世界遺産になったら、どんなビジネスチャンスが訪れるかわかりませんよ」と、まくしたてていました。私は「やっぱりそこか」と落胆しました。世界遺産登録が人間の欲をあおるできごとになっていることに、ひっかかりを感じたからです。

観光=ビジネスチャンスというのは本当なのでしょうか?
GO TO事業が再度行われるかもしれない今、少し考えてみたいと思います。
持続可能な観光とはなんでしょうか。

私の協議会長としての仕事の一つに、世界遺産に向けて町に出店したいと外部から見える商業社に対応することがありました。
それぞれの商業者とお会いし、この町に出店する目的や店舗運営の考え方をお聞きしながら、こちらからもこの町にはこの町のルールがあることを説明して、イベント的に出店されて短期間で撤退されては困る、といった話をしました。そういったことをともに理解をしたうえで進めていきましょうと。結局、出店された方の9割以上が撤退されました。

観光を経済的な側面だけでしか判断できない会社は、儲かると思うところに飛びついてきます。
そして、儲からないと判断すれば、躊躇なく撤退します。
その土地やそこに暮らす人々への愛などは微塵もありません。

住民同士の話し合いでなんとか合意形成がとれたら、今度は行政との話し合いです。行政とも、ずいぶんやり合いました。行政は世界遺産がこの町にプラスになるとしか頭にないわけですから、会議がヒートアップすることもしょっちゅう。そうすると互いに机を叩きながら大激論になります。行政の担当者は、それこそ昔から知っている飲み仲間。しかし世界遺産の話になると、彼らは行政、私は住民の立場で向かい合って激論をたたかわせる。お互いに性格まで知っているわけですから、悪い人間ではないことはわかっています。身近な人と対峙していく厳しさはありましたね。

人間の欲をあおる話というのは賛成派と反対派という分断を生みます。
これまで穏やかに暮らしていた地域に波風が立ちます。
そこまでして経済のための観光を行うのが果たして地域の未来にとって良いことなのでしょうか。

地方の経済というのは、ゆっくりと成長していくことが住民にとっても商売人にとってもいいわけです。ピークをつくることは、その黄金成長率を焦がしてしまう。
ブームをつくっては荒廃させていく消費型の観光地は日本各地に山ほどあります。
黄金成長率を無視し、単に目先の利益だけを追いかけた結果です。

大勢の観光客が押しかけて、地域に多くのお金が落ちればみんなが満足するのでしょうか。
自分の家の軒先にカメラを持った観光客がやってくるようなまちに住みたいと思うのでしょうか。

観光とは「その土地ならではの魅力を見に行くこと」のはずです。
その土地ならではの魅力というのは、他ならぬその土地に暮らす人々の生活そのものでしょう。
それを壊すような観光では、まったくの本末転倒となってしまいます。

観光によってその土地の人々の暮らしそのものが豊かになること。
もちろん経済的な豊かさもありますが、それだけではありません。
私個人としては、その土地の一次産業が豊かになることが大事だと思っています。

緊急事態宣言がすべて解除となり、これまで我慢していた分、観光が活気付くでしょう。
ぜひその地域の暮らしが豊かになることに結びついてほしいと心から思います。

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