SDGsの次に来るのはSWGs
ここ数年、サステナビリティという言葉は、企業経営の中で当たり前のように使われるようになりました。SDGsへの取り組み、環境配慮、社会課題への貢献。どれも重要ですが、一方で「何となくやっている」「説明のために取り組んでいる」という違和感を抱えている企業も少なくありません。
そうした中で、少しずつ注目され始めているのがサステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)という考え方です。
SWGsは、環境や社会の持続可能性だけでなく、「人がどんな状態で働き、生き続けられるのか」というウェルビーイングを中心に据えて、企業や社会のあり方を考えようとする視点です。サステナビリティを“守るための目標”として捉えるのではなく、“人がいきいきと続くための土台”として捉え直す発想とも言えます。
SDGsが主に「社会課題をどう解決するか」という外向きの目標であるのに対し、SWGsは「人をどんな状態にしたいのか」という内側からの問いを出発点にします。心身の健康、安心して働ける環境、仕事への納得感や意味、人とのつながり、成長や挑戦の実感。こうした要素をどう育てていくのかが、企業の持続可能性そのものだと考えるのです。
この視点が今、重要になっている背景には、人的資本開示やサステナビリティ開示の本格化があります。数字や制度だけでは、「この会社はどんな価値を生み続けようとしているのか」「人をどう扱っているのか」が伝わりにくくなってきました。その代わりに問われ始めているのが、「この会社は、人をどんな状態にしようとしているのか」という、より本質的な問いです。
これまでの事業や人材育成、組織づくりを「人のウェルビーイング」という軸でつなぎ直す
SWGsは、新しい目標を追加するためのフレームではありません。むしろ、これまでやってきた事業や人材育成、組織づくりを、「人のウェルビーイング」という軸でつなぎ直すための考え方です。だからこそ、上場・未上場を問わず、地域企業や子会社のような規模の企業にとっても取り入れやすい視点だと言えます。
未来ラボでは、社員を巻き込んだワークショップや対話を通じて、「自分たちはどんな会社でありたいのか」「人をどんな状態にしていきたいのか」を言葉にする取り組みを行っています。サステナビリティを制度やスローガンで終わらせず、日々の仕事や人の関わりの中で育てていく。そのプロセス自体が、SWGsの実践だと考えています。
サステナブルであることと、ウェルビーイングであること。その二つを切り離さずに考えることが、これからの企業経営に求められているのかもしれません。
SWGs宣言とは何か
SDGsが企業や社会に定着する一方で、2030年以降をどう考えるのかという問いも聞かれるようになってきました。そうした中で、日本発の提言として示されているのが、SWGs宣言(Sustainable Well-being Goals Declaration)です。
SWGs宣言は、国連が公式に採択した国際目標ではありません。SDGsの後継として決まった枠組みでもなく、各国や企業に義務づけられているものでもありません。民間主導でまとめられた「宣言」であり、これからの持続可能性をどう捉えるかを社会に問いかけるビジョン文書です。
この宣言の特徴は、サステナビリティの中心に「ウェルビーイング」を据えている点にあります。環境や社会への配慮に加えて、人がどんな状態で生き、働き続けられるのか。心身の健康や安心感、仕事への納得感や意味、人とのつながりといった、人の状態そのものを出発点にして、持続可能な社会を考えようとしています。人(People)、社会(Societies)、地球(Planet)を切り離さず、調和の中で捉える視点も示されています。
背景にあるのは、サステナビリティが「対応すべき課題」として語られ続けることで、現場が疲弊し、形だけの取り組みになりがちだという問題意識です。何を減らすか、何を防ぐかだけでなく、これからどんなよい状態を育てたいのかを語らなければ、持続可能性は続かない。SWGs宣言は、そうした問いに対して、ウェルビーイングという軸を提示しています。
SWGs宣言は、ルールや正解を示すものではありません。「従うべき目標」ではなく、「次はどう考えるか」を考えるための視点です。日本発の文脈を持ち、人・社会・自然の調和を重んじる価値観とも親和性が高いとされています。そのため、日本企業が自社のサステナビリティや人的資本を語る際の、ひとつの整理軸として注目され始めています。
SWGs宣言が繰り返し強調しているのは、「負の遺産を残さない」から「正の遺産を創り出す」への転換です。SDGsは社会課題への対応を強力に前へ進めましたが、2030が見えてくると、次は「何を避けるか」だけでなく、「どんな未来を残すか」を語らないと前に進みにくい。そのとき中心に置かれやすいのがウェルビーイングです。
ここは、企業の現場感とも一致します。サステナビリティが“対応”の言葉で語られ続けると、現場は疲弊し、活動が続かない。反対に「人がどういう状態になれば、この会社は続くのか」という問いから入ると、人的資本・組織・事業の話に接続しやすくなります(宣言でも「People / Societies / Planet」の整理が採られています)。(出所:https://well-being.nikkei.com/news/swgs-declaration_en_20251006.pdf?utm_source=chatgpt.com)
サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)の考え方
サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)は、以下のような考え方に基づいているのではないでしょうか。
総合的な幸福の追求
単に物質的な豊かさや経済的な成長だけでなく、精神的、社会的、感情的な幸福をも考慮。個人やコミュニティのウェルビーイングを高めるために、心身の健康、社会的なつながり、自己実現といった側面にも注目。
環境と社会の統合
持続可能な発展を目指すSDGsが環境と経済を主に扱っていたのに対し、サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズは環境保護を人間の幸福とつなげ、社会全体の健康に取り組む。
自然環境の保全は、人々の生活の質の向上につながっているというわけですね。
個人とコミュニティの相互作用
サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)は、個人の幸福がコミュニティ全体にどのように影響を与えるかも考慮するようです。コミュニティのサポート、社会的なネットワーク、地域とのつながりは、個人の幸福に大きな役割を果たします。個人とコミュニティの相互作用は、ウェルビーイングの向上にもつながっているわけです。
サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)の実践と課題
では、SDGsやサステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)を達成するためには、私たちは何をすれば良いのでしょうか。
- ポリシーと施策の導入: 政府・自治体や企業は、サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)の概念を取り入れた政策や施策を導入し、環境保護や社会福祉の向上を図る
- 教育と啓発: サステナブルウェルビーイングゴールズ(SWGs)の理念を広めるための教育や啓発活動を行う。個人やコミュニティが自らの幸福を高める方法について学び、実践していく。
- データと評価: サステナブルウェルビーイングゴールズ(SWGs)の効果を測定するための指標や評価方法を開発し、実践の成果を確認する
一方で「ウェルビーイング」の概念を含めることで、以下のような難しさも予想されます。
- 指標の設定: ウェルビーイングの定義や評価基準が曖昧であるため、実際の指標の設定や測定が難しい
- リソースの配分: 限られたリソースをどのように効果的に配分するか?環境保護と社会福祉の両立を図るためのバランスが求められる。
- グローバルな調整: 世界中で異なる文化や価値観が存在するため、サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)の実践においてはグローバルな調整とローカルな適用の両方が必要となる
人間中心のアプローチ
サステナブル・ウェルビーイング・ゴールズ(SWGs)は、SDGsの次なるステップとして、より人間中心のアプローチとして期待が高まります、幸福や福祉を中心に据えたこの概念は、持続可能な社会を実現するための新たな指針となりうるでしょう。環境と社会の両面から私たちの生活の質が高まっていくと良いですね。
日本の企業との親和性と、どう取り入れられていくか
日本企業での現実的な入り口は、制度導入ではなく「報告」と「組織づくり」からです。すでに宣言へ署名した企業が共同発表を出し、統合報告書などの英語文書でSWGsに触れはじめています。
取り入れ方は、だいたい次の順番が無理がありません。第一に、People(人)に関して「どんな状態を目指すのか」を言葉にする。第二に、その状態を支える取り組み(対話、現場を巻き込むワークショップ、制度の見直しなど)を小さくでも動かす。第三に、Societies(地域・社会)やPlanet(環境)とどうつながるのかを整理して、サステナビリティレポートや統合報告で一貫したストーリーとして外部に発信する。この順番なら、SDGsの“網羅”ではなく、自社らしい“筋の通った説明”として積み上げられます。
御社のサステイナブルは何ですか?一緒に見つけていきましょう
無理に背伸びをするのではなく、自分たちの会社のペースで、考え、話し合い、形にし、それを伝えていく。
その最初の一歩を、SDGs未来ラボはお手伝いします。ご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。取材や講演のお問い合わせもお気軽にどうぞ。

阿部昭彦
SDGs未来ラボ代表理事
Well-Being指標活用ファシリテーター
サステナビリティ推進パートナー
サステナビリティ/SDGsを「自分ごと」に変換し、対話から行動を生むプロセス設計を専門とする。九州電力(株)、日本たばこ産業(株)、TOTO(株)などの企業や、福岡県・沖縄県などの自治体・教育機関でも支援を実施。現在はSWGsも視野に、ウェルビーイングの観点を踏まえたプログラムも実施。組織や地域ごとの「大切にしたい価値」を言語化し、持続可能な行動につなげている。


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