地域づくりの議論では、
暗黙の前提として「成長」が置かれることが多い。
人口を増やす。
交流を生む。
経済規模を拡大する。
これらは分かりやすく、
議会や住民に説明しやすい目標でもある。
しかし、人口減少が長期的に続くことがほぼ確実となった現在、
この前提だけで地域政策を組み立て続けることに、
限界を感じている自治体も少なくないのではないだろうか。
課題の「把握」と、地域の「設計」は別のフェーズにある
将来推計人口や高齢化率といった指標は、
地域が置かれている状況を把握するために欠かせない。
一方で、それらの数値は
「この先、地域をどのような構造で維持していくのか」
という問いに、直接答えてはくれない。
人口が減ることは避けられない。
では、その前提のもとで、
・暮らしはどこで支えられているのか
・何があれば破綻せずに続いていくのか
・逆に、どこに無理が生じやすいのか
こうした問いは、
成長を前提とした指標からは
自然には立ち上がってこない。
「増やす」ことが、目的化していないか
人口増加やにぎわい創出は、
本来、地域の暮らしを支えるための手段である。
しかし現場では、いつの間にか
「増やすこと」自体が目的になってしまうことがある。
その結果、
・一時的なイベントの繰り返し
・外部資源への過度な依存
・担当者の異動とともに終わる施策
が積み重なり、
地域には達成感よりも疲弊感だけが残るという状況も生まれやすい。
ここで必要なのは、「成長できるかどうか」ではなく、
成長しなくても、地域がきちんと機能し続ける条件は何か
という視点ではないだろうか。
「縮小=衰退」ではないという捉え方
近年、地域政策や農村論の中では、
人口や規模が縮小していく現実を前提としながらも、
人の動きや関係性、役割が保たれている状態を
「にぎやかな過疎」と表現することがある。
これは、
人口が増えていないから失敗、
経済規模が小さいから衰退、
といった単純な二分法から一度離れ、
・規模は小さくなっているが暮らしは破綻していない
・人の関わりや役割が残っている
という地域の状態に目を向けるための言葉だ。
地域を「成果」ではなく「条件」で見る
福岡県の柳川市で暮らしていると、
人口規模や経済指標とは別のところで、
地域が成り立っている場面に出会うことがある。
困りごとが深刻化する前に共有される関係性。
市場に頼りきらず循環する物や労力。
効率は悪いが、無理なく続いてきた生活の形。
これらは数値化しにくい。
しかし、暮らしが破綻しないための重要な条件でもある。
ウェルビーイングを「成果」ではなく「条件」として捉え直す
ウェルビーイングは、
何かを達成した結果として後から得られるものではない。
安心して暮らせる。
困ったときに頼れる人がいる。
自分の役割を感じられる。
こうした状態が、日常の中で保たれていることそのものが、
ウェルビーイングだと言える。
地域政策においても、
数値目標の達成以前に、
・暮らしの安心は維持されているか
・関係性は断ち切られていないか
・役割が地域の中に残っているか
といった「条件」に目を向ける必要がある。
サステナブル・ウェルビーイングという設計思想
サステナブル・ウェルビーイングとは、
「成長するか、衰退するか」という二択ではなく、
規模が縮小しても、
にぎやかさ(=関係性や役割)が残る条件を
どう設計するか
を考えるための視点だ。
それは、人口減少という現実を否定するのではなく、
その中で地域が続いていく道筋を
現実的に描こうとする試みでもある。
成長以外の軸を持つということ
成長以外の軸を持つことは、
決して後ろ向きな選択ではない。
むしろ、人口減少時代において
地域の続き方を誠実に再設計する行為だと言える。
次回は、この視点をさらに進め、
「サステナブルは環境施策だけではない」
というテーマから、
地域の「続き方」をもう一段具体的に掘り下げていきたい。

阿部昭彦
SDGs未来ラボ代表理事
Well-Being指標活用ファシリテーター
サステナビリティ推進パートナー
サステナビリティ/SDGsを「自分ごと」に変換し、対話から行動を生むプロセス設計を専門とする。九州電力(株)、日本たばこ産業(株)、TOTO(株)などの企業や、福岡県・沖縄県などの自治体・教育機関でも支援を実施。現在はSWGsも視野に、ウェルビーイングの観点を踏まえたプログラムも実施。組織や地域ごとの「大切にしたい価値」を言語化し、持続可能な行動につなげている。


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