【第3回】指標だけではまちは変わらない


― ウェルビーイングは「制度」ではなく「文化」である ―

人口減少、財政制約、担い手不足。
多くの自治体が構造的課題に直面している。

そのなかで近年注目されているのが
Well-being(ウェルビーイング)指標の活用だ。

デジタル庁 が活用を推奨し、
スマートシティ・インスティテュート が開発した
Liveable Well-Being City指標®は、
「暮らしやすさ」や「幸福感」を可視化するツールとして広がっている。

しかし、ここで立ち止まりたい。

指標を導入すれば、まちは変わるのか。


「測定」は入口にすぎない

数値は現状を映す鏡だ。
だが、鏡は人を動かさない。

ウェルビーイングを政策に組み込むことと、
まちの空気が変わることは別の話だ。

幸福度を測ることと、
人が「ここに住み続けたい」と思うことは一致しない。

政策は制度でつくれる。
だが、文化は制度だけではつくれない。


善意依存から構造へ

多くのサステナブル施策が続かない理由は、
善意依存にある。

「未来世代のために」
「環境のために」

それは正しい。
だが、正しさだけでは持続しない。

持続するのは、

  • 経済合理性があるとき
  • 自分の暮らしの質が上がるとき
  • 誇りにつながるとき

つまり、

ウェルビーイングが「自分ごと」になるときだ。


先行事例が示すこと

スウェーデン・マルメ市

スウェーデン・マルメ市では、地区単位の実験から始め、
行政・企業・市民が横断的に関わる形で気候中立を目指している。

最初から「完成形」を目指したのではない。
小さな単位での合意形成と試行錯誤の積み重ねだ。

横浜市 もまた、
SDGs未来都市として段階的な市民参加型施策を展開している。

共通しているのは、

制度設計よりも、対話のプロセスを重視していることである。


柳川から見えるウェルビーイング

地方都市は不利ではない。

むしろ、
顔が見える距離感のなかで意思決定ができる。

ウェルビーイングとは、

  • 縁側での立ち話
  • 小さな商いが続くこと
  • 子どもが安心して歩ける風景

そうした日常の積み重ねだ。

これは統計では測りきれない。
しかし、確実に「まちの質」を形づくっている。

指標は必要だ。
だが、指標は目的ではない。

ウェルビーイングとは、制度ではなく文化である。

文化になるまで続けられるかどうか。
そこに自治体の本質的な挑戦がある。


次回予告

第4回では、

「ウェルビーイングと地域経済循環」

をテーマに、
産業政策・中小企業支援との接点を掘り下げる。


阿部昭彦 
SDGs未来ラボ代表理事
Well-Being指標活用ファシリテーター
サステナビリティ推進パートナー

サステナビリティ/SDGsを「自分ごと」に変換し、対話から行動を生むプロセス設計を専門とする。九州電力(株)、日本たばこ産業(株)、TOTO(株)などの企業や、福岡県・沖縄県などの自治体・教育機関でも支援を実施。現在はSWGsも視野に、ウェルビーイングの観点を踏まえたプログラムも実施。組織や地域ごとの「大切にしたい価値」を言語化し、持続可能な行動につなげている。

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