― ウェルビーイングは「制度」ではなく「文化」である ―
人口減少、財政制約、担い手不足。
多くの自治体が構造的課題に直面している。
そのなかで近年注目されているのが
Well-being(ウェルビーイング)指標の活用だ。
デジタル庁 が活用を推奨し、
スマートシティ・インスティテュート が開発した
Liveable Well-Being City指標®は、
「暮らしやすさ」や「幸福感」を可視化するツールとして広がっている。
しかし、ここで立ち止まりたい。
指標を導入すれば、まちは変わるのか。
「測定」は入口にすぎない
数値は現状を映す鏡だ。
だが、鏡は人を動かさない。
ウェルビーイングを政策に組み込むことと、
まちの空気が変わることは別の話だ。
幸福度を測ることと、
人が「ここに住み続けたい」と思うことは一致しない。
政策は制度でつくれる。
だが、文化は制度だけではつくれない。
善意依存から構造へ
多くのサステナブル施策が続かない理由は、
善意依存にある。
「未来世代のために」
「環境のために」
それは正しい。
だが、正しさだけでは持続しない。
持続するのは、
- 経済合理性があるとき
- 自分の暮らしの質が上がるとき
- 誇りにつながるとき
つまり、
ウェルビーイングが「自分ごと」になるときだ。
先行事例が示すこと
スウェーデン・マルメ市
スウェーデン・マルメ市では、地区単位の実験から始め、
行政・企業・市民が横断的に関わる形で気候中立を目指している。
最初から「完成形」を目指したのではない。
小さな単位での合意形成と試行錯誤の積み重ねだ。
横浜市 もまた、
SDGs未来都市として段階的な市民参加型施策を展開している。
共通しているのは、
制度設計よりも、対話のプロセスを重視していることである。
柳川から見えるウェルビーイング
地方都市は不利ではない。
むしろ、
顔が見える距離感のなかで意思決定ができる。
ウェルビーイングとは、
- 縁側での立ち話
- 小さな商いが続くこと
- 子どもが安心して歩ける風景
そうした日常の積み重ねだ。
これは統計では測りきれない。
しかし、確実に「まちの質」を形づくっている。
指標は必要だ。
だが、指標は目的ではない。
ウェルビーイングとは、制度ではなく文化である。
文化になるまで続けられるかどうか。
そこに自治体の本質的な挑戦がある。
次回予告
第4回では、
「ウェルビーイングと地域経済循環」
をテーマに、
産業政策・中小企業支援との接点を掘り下げる。

阿部昭彦
SDGs未来ラボ代表理事
Well-Being指標活用ファシリテーター
サステナビリティ推進パートナー
サステナビリティ/SDGsを「自分ごと」に変換し、対話から行動を生むプロセス設計を専門とする。九州電力(株)、日本たばこ産業(株)、TOTO(株)などの企業や、福岡県・沖縄県などの自治体・教育機関でも支援を実施。現在はSWGsも視野に、ウェルビーイングの観点を踏まえたプログラムも実施。組織や地域ごとの「大切にしたい価値」を言語化し、持続可能な行動につなげている。



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